Post 11
 ダンネツでは、国の住宅政策の動きにも積極的に対応しています。その1つの例が北海道釧路市に建てられた「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」に対する設計支援と企画監修。『DAN壁』(だんぺき)を使った超高断熱化や、太陽光発電、地中熱ヒートポンプといったエコ・高効率設備機器の導入によって、雪と寒さが厳しい地域でも太陽光発電の売電額が支払った光熱費を上回るという成果を収めています。

外壁は『DAN壁』155mmを
外張付加した260mm断熱

 この住宅は、平成25年1月に竣工した約37坪の在来木造2階建てで、設計・施工は釧路の地場ビルダー・(有)本間技建(本間敬社長)。当時オーナーは、子供がちょうど1歳を迎えた子育て世帯の一次取得者でした。
 省エネ化についてオーナーは、当初太陽光発電の設置だけを考えていましたが、ダンネツからちょうど募集を行っていた経済産業省の補助事業“ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業”への応募を提案。オーナーは「最初はゼロ・エネルギーのイメージがわきませんでしたが、一軒家なら1ヵ月あたり2〜3万円かかると思っていた電気代が貯蓄に回せて、さらに環境にも良い家で暮らせるならとても嬉しい」と、提案を受け入れてくれました。

 北海道でゼロ・エネルギーを達成するには、本州と比べて非常に大きい暖房負荷をいかに減らせるかがポイント。そこで外壁はグラスウールブローイング(アクリアブロー)105mm充填+DAN壁155mm外付加の260mm断熱とするなど、大幅に断熱を強化。熱損失係数=Q値は0.89Wと1.0Wを切る高い水準を達成しました。
 本間技建の本間羊一さんは「DAN壁は軽量で躯体に負担がかからず、通気層施工を省略できるほか、自由なデザインの塗り壁仕上げも可能という点を魅力に感じ、新築で標準採用していますが、今回155mm厚で施工するにあたっても、特に苦労したということはなく、外装荷重についても全然心配のないレベルです」と言います。

地中熱ヒートポンプ+太陽光発電で
省エネ・創エネ

 一方、設備面では暖房に地中熱ヒートポンプを採用。地中に入れたU型のチューブで回収した地中熱で温水を作り、1階のLDKは床暖房、他の個室などはパネルラジエーターで温めます。給湯は空気熱ヒートポンプのエコキュート、照明はキッチンや浴室、洗面化粧台なども含めてオールLEDとしました。太陽光発電は屋根上に5.08kWのパネルを設置しています。

 断熱強化と暖房・給湯のヒートポンプ、LED照明で700万円を超えるコストアップとなりましたが、このうち350万円は経産省が補助。他に太陽光発電やHEMSで30万円弱ほど国の補助を受けることができました。

入居1年目に6万6000円の
黒字を達成

 入居した平成25年3月から翌年2月までの電力使用量と太陽光発電売電量のデータを見ると、電力使用量は約6900kWhで、太陽光で発電した電気のうち、自家消費分を除いた売電量は約4500kWh。エネルギー使用量を太陽光発電で差し引きゼロにするネット・ゼロ・エネルギーには残念ながら届きませんでした。
 しかし、月別に見ると6月から10月までは太陽光発電の売電量が電力使用量を上回る“プラス・エネルギー”を達成。太陽光発電売電量も、1月に最も多い453kWhを記録するなど、天候が悪かった12月を除けば冬も発電量は夏場と遜色ありません。

 また、光熱費は年間の電気代約12万3000円に対し、太陽光発電の売電収入は約18万9000円。差し引き6万6000円の“黒字”となりました。買取価格が42円/kWhと高かったこともあり、電力使用量が売電量より多かった3〜4月も収支はプラスとなっています。電気料金のほうが多かったのは、12〜1月の3ヵ月間のみで、その差額は合計しても1万円に満たないほどでした。
 この住宅を担当したダンネツ・野村秀二常務は「地中熱ヒートポンプのコントロールが難しく、予想以上にホットタイム22の電力使用量が多くなりましたが、オーナー様が設備を使い慣れて、建物の温・湿度も安定する2年目以降は、もう少し成績が上がりそうです。お客様の理解が得られ、住宅の省エネ化や社会の低炭素化に貢献できるのであれば、今後もゼロエネルギー化に積極的に取り組んでいきたいですね」と話しています。